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雪と、梯子の話

a)
夜、職場の駐車場の雪かきをしていたら、
あたりが一瞬明るくなって、そのあと雷鳴が轟いた。
降りしきる雪の中で遭遇する雷は生まれて初めてだった。
自然は、色々なものを見せてくれるなぁと感慨深く思う。

広い駐車場、一面の雪の中、
雪かきスコップを持ったわたしの姿が閃光とともに浮かび上がる。
その様が、天からはどう見えたかと想像すると、
感動的とはまさかも思わず、
ただ滑稽な、
ただただ滑稽な小さな点であったろうかと
我知らず、笑いがこみ上げてくるのだった。

点の織りなす一瞬の滑稽な人生
点にとっては長くひたすらな

点の喜び、憎しみ、悲しみ、幸せ
閃光が転写してみせたかのようなそれに
思わずこぼれる笑い

滑稽

しかし、
それは滑稽でありつつ
静かな満足の笑いでもあったかもしれない






b)
エンタメの世界でおきる事件について、あれこれ語るような日記とは思っていないが、先日おきた漫画家のかたの自死報道について、その「犯人探し」のような投稿をネットで多数目にし、なんとなく触れたくなった。原作である漫画の作者側と、それを脚本化しドラマ制作した側という対立軸を設け、原作者を死に追い込んだのは誰なのかという論争が繰り広げられていた。議論するべき問題点が根深くあるとしても、今回、わたしが最初に感じたのは、漫画の出版社側が、ドラマ化の利権収益に目が眩んで、結局、作者の口を封ずるような態度をとったのではないかという懸念だった。よくある言い方をすれば、身内であるはずの出版社が、作者の「はしごをはずした」のではないかと。絶望とは、敵対するものとの間でおきるよりも、味方だと信じたものの裏切りを知っておきるときのほうが、よほど強いものではないか。もちろん、それは憶測であるし、誰が悪いなどという結論を導きたいわけでもない。理不尽きわまりないようなことは、大権力に直面していない、凡人の小競り合いのような日々のなかでさえ、茶飯事だ。だが、その理不尽の大きな根を突き止めるような場所まで、小さな魂が押し出されていったとき、そのひとの苦悩は計り知れないと思わざるを得ない。そのうえ「はしごをはずされ」たら。

この「はしごをはずす」という行為にこそ、「非人道」という大きな単語で語られるべきものの端緒はないか。どんな戦争にも、こうした「澄ました顔ではしごをはずす」というどす黒い瞬間が、方々にちりばめられているのではないか。








# by kokoro-usasan | 2024-02-07 11:26 | 日々

ネット赤ちゃん

ネット赤ちゃん_e0182926_12151510.png
友人のツイッターを読んでいたら、インターネット老人度診断というのが紹介されていて、友人は、すでに「おじさん」(おばさん?)という認定を受けていました。ちょっと興味ひかれ、わたしも診断を受けてみることにしました。

その結果、冒頭のような判定が出て、おしめをしている半裸の我が姿を目の当たりにしました。(髪の生え方もちょっと変です)老人度が0というのは、実人生ではそこそこ羨ましい話になるのかもしれませんが、この場合は、なんていうか・・・、とにかく、わたしはおしめのまま、ネット界隈をハイハイしているということになるようなので、ちょっと笑ってしまいました。(赤ちゃんとしての分もわきまえ、今回は、文体も、謙虚に「です・ます」調です)

ネットを始めたふた昔も前から、自分がネット上のアングラ世界に習熟するとは、微塵も思っていなかったので、想像通りの結果を迎えているわけですが、このイラストは笑撃で、記録に残しておくことにしました。

アングラ世界を生き抜く力とは、どんな力なのだろう。



# by kokoro-usasan | 2024-01-30 12:42 | 日々

ファンタジー

私の血などすべてファンタジーで作り上げたものなのだという、時折訪れる疎外感にとらわれていたら、それを知る由もない友人から手紙が届き、偶然にも、「これはファンタジー小説のくだりなのですが」という一文が添えられていた。


  そして、
  たとえ、どのような年でも、
  春は必ず還ってくる。
  ボクらは、壮大な四季の繰り返しのなかで、
  日々の実験を試みる小さな魂にすぎなかった


だとすれば、自分の疎外感は、この小さな魂がないがしろにされたと感じるときに起きるのかもしれないと思った。小さな魂にすぎない「わたし」が、毎日、新しく始めなければならない目の前の一日に対し、端っこなら踏んでも差し支えないものででもあるかのように、皆がぞろぞろ踏んでゆくとき、それは、わたしが「ファンタジー」だからですか、と問いたくなる。ファンタジーだから、踏んでも構わないのですか、と。でも、この友人が添えてくれた一文を読み、そうか、わたしは、実験を試みる小さな魂にすぎないのだから、端どころか、垂直に上から押し潰されたって、また、明日、やり直すだけだ、と思うことにした。ファンタジー上等。



# by kokoro-usasan | 2024-01-23 17:43 | つぶやき

ヤギ詣で

                                                   
ヤギ詣で_e0182926_11515393.jpg





































ヤギに「初詣」した。前回訪問したときと同じヤギなのか見分けもつかず、声も掛けづらく思っていると、ちょうど草を持って給餌にやってきた男性がいたので、最初は黙って遠巻きにその様子を見ていたが、にじりよって、まんまと隣に並んで立ってみた。怒られたら、何気なく離れようと思ったが、ヤギに餌やりするような人で、そんなに意地悪なひとがいるとも思えない。案の定、気さくに話しかけてくれた。

「この子はすごい器量良しで、もうモテモテなのよ」と男性が言う。写真の向かって左側が、当代一の器量良し「マール」さんだ。そして、その横にいるのが、昨年の7月1日に生まれた、マールさんの息子「ナナ」くんだという。器量好しで気立てもよく、子育ても上手だと、マールさんを手放しに褒める男性は、なんだかご自分もマールさんに恋しているかのような雰囲気で、人間とやぎの違いこそあれ、マールさんの対局にいるようなわたしは、段々肩身が狭くなってくる。

子ヤギだったころのマールさんに、わたしは会っているのではないか。一昨年訪ねたとき、賢くて優しそうな佇まいの子ヤギがいたのを思い出す。あのころよりも、給餌場なども整備され、大事にされているようなのは、今、自分の横にいる男性の尽力なのだろうか。
「ここの家のおばあちゃんが、こうしてヤギが元気なのを喜んでくれるもんだからさぁ」と男性は目を細める。どうやら、この家の人ではないらしい。「この家」というのは、以前に書いたが、八木重吉の生家だ。八木重吉の子孫にあたる方が住んでおられる。だが、もうご高齢で、「八木重吉記念館」も、今は開店休業のような状態だ。それでも、寂れた様子はなく、古いながらも丁寧に住まわれているのが傍目にもわかるのはいいことだ。近隣の方に愛されているのかもしれない。マール母さんとナナくんの栄養状態も、以前見たヤギの記憶よりも、色つやよく元気そうだ。草を運んでいる男性のおかげかもしれない。いろいろ、ヤギの飼育に関するお話を伺ったあと、男性は帰っていかれ、わたしもそのまま一旦、ヤギとお別れしたが、男性の話ばかり聞いていて、ヤギたちとお話する時間がなかったのを後悔し、あともどりした。

モテモテのマールさんの写真も撮っておこうと思う。マールさんに、みずから草を差し出して、いっぱいお食べなどと話しかけていたら、マールさんが、しきりに、わたしの左手のほうをうかがう。たまたま来る途中で摘んだ菊の小花(カレンデュラ)を左手に持っていたのだ。「そっちは、なんですか」とマールさんに聞かれた気がして、「え。これも食べたいの?」と少し取って差し出すと、「それは、今はいらないです」と言われた。そうですか。

帰ってきて写真を確認する。マールさんの口元がフレンドリーでよい。八木家のヤギが、これからも大事にされることを祈る。




# by kokoro-usasan | 2024-01-08 12:28 | 日々

「俺のとは違うなぁ」

「俺のとは違うなぁ」

と検視官倉石義男は言う。テレビドラマ『臨場』の中での話だ。死因の見立てが違うという意味なのだが、倉石が、どの局面、どの場面でその「決め科白」を言うかが面白いところだ。それはいつも、いよいよ結論と思われる見解が示されるなかで、口にされる。このドラマを見たあと、しばしば「俺のとは違うなぁ」という言葉が妙に頭の中でリフレインするのは、その流れで時事ニュースなど見ることが多いからだろうか。

「俺のとは違うなぁ」と思いながら、記者会見での政治家の答弁を見ている。
およそ彼らの答弁は、心肺停止がみとめられ、言葉も変色して死後硬直をきたしているように思える。何故、死に至ったのか、倉石義男に見立ててほしいくらいだ。「根こそぎ拾ってやれ」、これは死因を究明するときの倉石のスタンスだけれど、根はどのくらい深いのだろう、この場合。

殺人事件で、責任能力の有無が問題になることが多いが、政治の世界では、責任能力のないものが大手をふって国民を奈落に落としても訴追されないどころか、裏金まで作って肥え太っても、むしろ安泰だという。なまじ責任能力などあったら、とても正気では続けられない仕事なのか。あぁ、ひどい。新年早々、この悪態。どうぞご容赦ください。



# by kokoro-usasan | 2024-01-04 20:44 | 日々


閉じられていないもの


by kokoro-usasan

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