猫
深夜、仕事から戻り自宅の門扉の前に立つと、少し先に設置してあるセンサーライトがパッと点いた。おかしいな、わたしを感知して点灯するには距離が離れすぎていると思ったら、そのセンサーライトがスポットライトのように照らし出している場所に白い猫がぴょこんと立ち竦んでいた。固まって、自分でもどうしていいかわからない、といった風情だった。
白い猫、このところ、何回か、我が家の庭を走り抜けてゆくのを見ている。まだ小さな猫なのだけれど、どうも、しばらく前に、仔猫を産んでいるようだ。家猫なのか、野良猫なのかわからない。ただ、肩や背中のあたりが痩せているのが気になる。スポットライトに照らされて、しかも人間に見られて、すぐに逃げるかと思ったけれど、なにかもの言いたげに、少し逃げては振り返ってみたりしている。あのね。わたしの人生に、猫を飼うという選択肢はないからね、と何度目かの心の誓い。動物が嫌いということではないのだけれど、自分の中で「飼う」という行為の敷居が高い。語弊があるが、自分が養子であることと少し関係しているかもしれない。
翌朝、窓を開けると、茶トラと、キジトラの仔猫が、我が家の庭先をよちよちしていた。あら、かわいい、なんて近寄って抱き上げることはしない。ただ見ている。2匹もこちらに気づいて、茶トラはちょっと警戒。キジトラは考え中。そのうち、ぴょんぴょんと、母猫のいるらしいこちらからは見えない方角に一緒に駆けていった。朝食の洗い物をして、また窓辺に行くと、今度は母猫の白猫が庭を走っている。痩せてるなぁ。ご飯食べてるのかなぁ。でも、それ以上はコンタクトしない。わたしをちらちら見ながら塀に飛び乗った白猫は、やはり、またちょっと振り返ってわたしを見る。2階のベランダに洗濯物を干して、また階下に降りると、窓近くの縁石に、再び現れた茶トラとキジトラがミャーと言っている。「おかあさんとはぐれたの?おかあさん、さっき、あっちのほうに行ったよ」
あのね。わたしの人生の選択肢に猫を飼うというのはないからね。いちいち心に誓う。
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by kokoro-usasan
| 2019-07-25 11:57
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