綿毛
「お母さんはお元気ですか」
大学時代の友人が遠くからそうメールをくれる。こんなことを言うと、失礼な話だけれど、彼がそんなメールをくれる人間になるなんて、学生の頃は考えもしなかった。わたしも彼も、きっとそれぞれ「無責任やさぐれ人生」を送るものだと思っていた。青臭い心のときによくあるように、「野垂れ死」なんて言葉も輝いていた時代だったわけで。
別に願わなくても、自然と野垂れ死に近い最期になるような気がしてきたわたしだけれど、放っておいたら、無責任極まりなくどこまでもだらだらしそうな自分を、なんとか社会のなかに置き続けてこられたのは、たぶん、「まぐれ」みたいなもので、もうこれ以上のはったりはきかないな、なんて最近は真摯に思うのだった。(こういうときに真摯に、というのも変だけど)
とはいえ、「まぐれ」というのは、思いがけない幸運(よい結果)をいうもので、あなたは、どちらかというと、思いがけない不運に見舞われていやしませんか、と物のわかった誰かに言われそうだ。すごく客観的に言うと、そのほうが事実に近いのかもしれないけれど、あまり人生へのモチベーションが高くないせいか、そのあたりにこだわる趣味もないのは、なんだか、全体としてよかった気がする。
あるいは、その不運こそが、わたしを社会に置かせしめたのかもしれない。不運と不幸は違うものだし。そう、きっと不運の波にのって、社会を渡ってきたのだ。ずいぶんお気楽だけれど、そういう渡り方もあるのだろかな。でも、やはり、それもまた「まぐれ」なのだとわたしは思う。何となれば、わたしは、この「まぐれ」を実はとても愛おしく思っているから。
「お母さんはお元気ですか」
ひとの親のことなんか心配してくれるひとだと思いもしなかった友人が、そうやって、ときおりメールをくれるようになったのとおなじように、わたしも、何かが暖かく深く変われているだろうか。
わたしの「まぐれ」は、まだきっと残っている。
人生から、蒲公英の綿毛のようなものを、解き放ちたい。
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by kokoro-usasan
| 2018-02-20 20:29
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