金木犀
金木犀が香り始めました。
きのうは、下高井戸に映画「あん」を見に行きました。原作となったドリアン助川さんの本が、家のどこかにあるはずなのですが、そのうち、そのうちと思っているうちに、ずいぶん時間が経ってしまいました。出版されて割とすぐ買ったように思うので、その後、河瀬監督が、一本、映画を撮り終えて、公開も済んで、リバイバル上映となった位の時間が経ったということですね。信じられないなぁ。時間・・・。
しばらく前に、この「あん」という本の誕生にあたって、一度大手出版社に断られたのだという話を知りました。理由は明記されていませんでしたが、おそらくハンセン氏病の問題が扱われているからだということは推測できます。落胆する助川さんにお知り合いのかたが別の出版社を紹介してくれ、そこには、「心ある」人がいるから、大丈夫かもしれないとおっしゃったそうです。そしてめでたく出版の運びになったと、その文章は終わっていました。わたしの頭のなかで、その「心ある」人って誰だろう、という問いがふっと浮かびました。ちらりと、ひとり、頭に浮かびましたが、そのまま、そのようなエピソードは忘れて、映画館の席に座っていました。
木々のそよぎがなんとも美しく撮影されている映画でした。同じ人間社会にいて、理不尽に、生きる自由を奪われた魂が、自然のなかの光や音や、また、人の心の哀しみについて、どれほど深い洞察を持つものか、あらためて考えさせられました。会場はリバイバルにもかかわらず、たくさんのお客さんが入っていて、わたしは、補助椅子で見たのでした。
そして、映画が終わり、クレジットが流れているのを、じっと見つめていたときです。助川さんの本の出版を引き受けた人の名前が出てきました。「あ!」わたしが「ちらりと」頭に浮かべたその人でなのです。
そこには、「野村浩介」と書かれていました。
わたしが大好きだったブログの著者です。すでに終わってしまいましたが、あのブログは、わたしのなかで、とても大切なものになっていて、こんなに素晴らしい文章が書けるのに、なぜ、作家ではなく、編集者なのだろうと訝しく思う位でした。(というより、よい編集者って、きっと、なまじの作家より、ずっと、卓越した文才を持っているものかもしれません)ちょうど、野村さんのその古いブログを、このところ読み返していたときだったので、不思議なものだとつくづく感じました。
さて、「不思議」つながりでもひとつ。映画を見たあと、その近所に新しくオープンしたギャラリーがあることを、他のかたのブログで目にしていたので、いい機会と思い訪ねてみました。世田谷線の線路の真横で電車がひっきりなしに通るのですが、逆にそれ以外は静かな場所で、とても居心地のいいギャラリーでした。又聞きの又聞きのような情報で、訪ねていったそのギャラリーだったのですが、オーナーのかたとお話ししていたら、その女性のお友達が、わたしの同級生の妹さんだったことがわかりました。
なんだか、やっぱり、いろいろと、不思議です。めぐりあわせって。
金木犀が香り始めると、「星の時計のリデル」のお話を思い出します。大事な本だったのに、全3巻のうち、最初の1巻を、友だちに貸してしまって、たぶん、もう返ってこないでしょう。
その1巻と引き換えに、自分の兄に会えたならいいのにな、と、時々思います。物語のように。
きのうは、下高井戸に映画「あん」を見に行きました。原作となったドリアン助川さんの本が、家のどこかにあるはずなのですが、そのうち、そのうちと思っているうちに、ずいぶん時間が経ってしまいました。出版されて割とすぐ買ったように思うので、その後、河瀬監督が、一本、映画を撮り終えて、公開も済んで、リバイバル上映となった位の時間が経ったということですね。信じられないなぁ。時間・・・。
しばらく前に、この「あん」という本の誕生にあたって、一度大手出版社に断られたのだという話を知りました。理由は明記されていませんでしたが、おそらくハンセン氏病の問題が扱われているからだということは推測できます。落胆する助川さんにお知り合いのかたが別の出版社を紹介してくれ、そこには、「心ある」人がいるから、大丈夫かもしれないとおっしゃったそうです。そしてめでたく出版の運びになったと、その文章は終わっていました。わたしの頭のなかで、その「心ある」人って誰だろう、という問いがふっと浮かびました。ちらりと、ひとり、頭に浮かびましたが、そのまま、そのようなエピソードは忘れて、映画館の席に座っていました。
木々のそよぎがなんとも美しく撮影されている映画でした。同じ人間社会にいて、理不尽に、生きる自由を奪われた魂が、自然のなかの光や音や、また、人の心の哀しみについて、どれほど深い洞察を持つものか、あらためて考えさせられました。会場はリバイバルにもかかわらず、たくさんのお客さんが入っていて、わたしは、補助椅子で見たのでした。
そして、映画が終わり、クレジットが流れているのを、じっと見つめていたときです。助川さんの本の出版を引き受けた人の名前が出てきました。「あ!」わたしが「ちらりと」頭に浮かべたその人でなのです。
そこには、「野村浩介」と書かれていました。
わたしが大好きだったブログの著者です。すでに終わってしまいましたが、あのブログは、わたしのなかで、とても大切なものになっていて、こんなに素晴らしい文章が書けるのに、なぜ、作家ではなく、編集者なのだろうと訝しく思う位でした。(というより、よい編集者って、きっと、なまじの作家より、ずっと、卓越した文才を持っているものかもしれません)ちょうど、野村さんのその古いブログを、このところ読み返していたときだったので、不思議なものだとつくづく感じました。
さて、「不思議」つながりでもひとつ。映画を見たあと、その近所に新しくオープンしたギャラリーがあることを、他のかたのブログで目にしていたので、いい機会と思い訪ねてみました。世田谷線の線路の真横で電車がひっきりなしに通るのですが、逆にそれ以外は静かな場所で、とても居心地のいいギャラリーでした。又聞きの又聞きのような情報で、訪ねていったそのギャラリーだったのですが、オーナーのかたとお話ししていたら、その女性のお友達が、わたしの同級生の妹さんだったことがわかりました。
なんだか、やっぱり、いろいろと、不思議です。めぐりあわせって。
金木犀が香り始めると、「星の時計のリデル」のお話を思い出します。大事な本だったのに、全3巻のうち、最初の1巻を、友だちに貸してしまって、たぶん、もう返ってこないでしょう。
その1巻と引き換えに、自分の兄に会えたならいいのにな、と、時々思います。物語のように。
by kokoro-usasan
| 2015-09-15 07:48
| 日々
閉じられていないもの
by kokoro-usasan
最新の記事
雨続き⑵ |
at 2024-03-26 20:19 |
雨続き |
at 2024-03-26 10:33 |
沈丁花 曇天 |
at 2024-03-24 11:59 |
ふき |
at 2024-03-12 11:44 |
与一 |
at 2024-03-11 12:12 |
竹取物語 |
at 2024-03-04 13:15 |
意地悪はしないにかぎる |
at 2024-03-01 11:29 |
言い訳が多いのは、無いも同じと。 |
at 2024-02-26 12:40 |
遠くまで見晴らせるキッチン |
at 2024-02-24 18:40 |
フジヤ君の弟 |
at 2024-02-23 21:39 |
以前の記事
2024年 03月2024年 02月
2024年 01月
more...
カテゴリ
全体日々
つぶやき
ことば
音楽
映画
本
演劇
旅
トピックス
スナップ
すてき
あやしい特派員
さまよえる消費者
すきなもの
あじわい~
気になるこの子
展覧会
庭の楽しみ
手をうごかしてみる
追想
ごあいさつ
きょうの新聞から
幕間
一枚の写真
ダンス
※
夢
未分類