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潜在意識

潜在意識_e0182926_1803943.jpg沖縄の86歳の島袋文子さんが言った「あんたたちは飲めるか。わたしは死んだ人間の血の泥水を飲んで生きてきたんだよ」という言葉が心を打った。沖縄戦での話。飲み水がなかった。

「死んだ人間の血の泥水」は比喩などではないだろう。そして、「飲めるか」という問いについても、歴史の証言としてただ聴くのではなく、実際に想像してみなければならないのだと思う。

この記事を書く前に、今日は、余計な話を書いた。父との釣りの話。まったくどうでもいいような話。そちらを先に書いたのは、おそらく、島袋さんの「血の泥水」という言葉を聞いたあとだったからだ。そのとき、わたしの脳裏には、「蛆」が連想された。父と行った釣堀の便所で見つけた蛆虫のこと。話が父との釣りの話で膨らみ、そのまま、延々と続けてしまったが、一旦、書き終わって、やはり、島袋さんのところに戻らなければと感じた。

「あんたたちは飲めるか」

飲めねば死ぬということになったら、ひとは飲むのだと思っている。寿命はまだ十分ありそうなのに、ここで血の泥水を飲むか飲まないかで命に終わりを迎えざるを得ないのだと思ったら、まるで、精神ではなく、生物の欲求に突き動かされるように音をあげて啜り上げてしまうのではないかと、そう思うのだ。島袋さんは、飲む水もなくて、死んだ人間の血の泥水を飲んでしのぐような時代、紙切れ一枚でひとに命を捨てさせるような時代がもう二度と来てほしくなくて、戦後の70年を過ごし、直近の18年を辺野古に座ることで過ごした。

いま、集団的自衛権の問題も、基地の問題も、コンビニエンスストアの営業戦略会議の議題ででもあるかのように、論じられ、進められようとしている。死んだ人間の血の泥水を啜る音なんて、どこからも聞こえてこない。戦争もずいぶん、オシャレになったらしい。無人機で人も殺せる。でも、死ぬほうの人間は「無人機」じゃないのだ。血の泥のなかにそのからだを横たえて絶命するのだ。人間って、どこの国でも、最初は、自分が「殺せる側」だと感じている。「どうやってやっつけてやろうか」と考える。それが、そのうち、突然、きのうまで居た友達が「殺されて」びっくりする。バタバタと友人が殺されてゆく。敵があなたの友達を殺したのではない。あなたの「潜在意識」が、友達を殺したのだ。人間が死んでも戦争だからしかたがないと思っている潜在意識が。

少なくとも、わたしは島袋さんの潜在意識には殺されないだろうと思う。わたしも潜在意識で島袋さんを殺したくない。営業戦略であつらえられた戦争の陳列棚に命を並べてほしくない。
by kokoro-usasan | 2015-05-11 20:01 | つぶやき


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