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いつも寄り道

a)去年から、2ヶ月に1回のペースで色彩に関するとても興味深い講座を受けているのですが、会場が南青山なので、いつも帰りに原宿のクレヨンハウスに寄ります。子供の本がたくさんあって、大好きな場所です。今日も講座の帰りに寄りましたが、普段入るカフェレストランのドアが閉まっていて、戸外のテラス席でのみ営業とのこと。もう夕方で、テラス席という気候でもないなぁと思ったものの、何組か家族連れのかたたちが、にこにこと食事をとっておられたので、わたしも、ケーキセットを頼みました。どうも、レストランの中では特別イベントが行われている模様。

その後、絵本売り場を徘徊していたら、イベントが終わったらしく、急に人がたくさん出てきました。その最後に出てらっしゃったのは、長倉洋海さんと谷川俊太郎さんのお二人。長倉さんには、昨年、地元で開かれたイベントでお会いしたばかりだったので、「あら、ひさしぶり」のような図々しい親近感を抱きつつ(心の中でそう思うだけで、直に挨拶しに行ったりはできない人間なのですが・・・。長倉さんが、わたしを覚えてらっしゃるとも思えませんでした)、もうひとりの谷川さんのほうは、初めて近くで拝見したこともあり、じっと、その背中を見つめてしまったりしたのでした。わたしは、谷川さんの詩では、「うつむく青年」という詩が、若い頃好きでした。これは、個人的な感想なのですが、谷川さんの詩を読むと、このひとは、「一人っ子」だなぁという気がします。兄弟がいないひとの詩だなぁって。どこが、とか、どんなふうに、とか分析してみたことはないのですが、ちょっと、「もやし」を思うときがあるのです。こんなことを言うと、谷川さんのファンのかたに怒られちゃうかしら。別に批判しているわけではなくて、そういう匂いがするというだけです。一人っ子やもやしが、だめだと思ってるわけでもないです。ただ、今日、実際の谷川さんの背中を見ながら、そこにやはり「一人っ子の子供」がいるような感じがして、不思議でした。坂本龍一さんにも同じようなものを感じます。今度、そのあたり分析してみたほうがいいかしら。いやいや、あてになりません、ただの思いつきだもの。

b)往復の電車のなかで、先日、図書館で借りた「上野英信 萬人一人抗」(河内美穂著)を読んでいました。その中に尾崎秀樹さんが魯迅の著作について論じた引用があったのですが、「彼の筆法は内側に沈潜してみずからを傷つけながらあばいてゆくやり方であり、それが彼の表現の独特な味わいとなっている」とあり、なるほどと思いました。魯迅が、もし「内側に沈潜してみずからを傷つける」ことなく、ひとつのテーマを書き上げていたら、あんなに、単純な解釈を拒む重層的な作品にはならなかっただろうなと。

魯迅を敬愛していた上野さんも、自分の闇を棚に上げて文章を書くことはなかったのではないかということなのですが、それは、逆にいうと、自分の闇を見据えるがゆえに、そのことは敢えて「書かない」という事柄もあったということになるのかもしれず、「書かない辛さ」に耐えながら作る作品というのも、文学にはあるのかなぁと少し考えさせられました。

今日読んでいたところで、今、ちょっと興味深く感じているのは、以下の部分。備忘録代わりにちょっと書き留めておこうと思います。

ー庶民は<いわれなき神>によって、<いわれなき死>に向かう。<いわれなき死>に際会したとき<いわれなき神>が立ちのぼり、その神こそが死を命じたことに思い至る。この<いわれなき神>と<いわれなき死>の関係こそ、明治維新から営々と繰り返された棄民政策のマジックだった。民衆の内側に神格化した天皇を鎮座させ、その天皇の名の下に、「玉砕」「散華」を強いてきたのだ。ー

これは「上野英信と天皇制」という章で触れられている章なので、その絡みのなかで、この文も登場するのですが、読んでいて、ひとは、<いわれなき神>によって<いわれなき死>に向かうのみならず、むしろ<いわれなき死>に直面したとき、その当て所なさのなかで<いわれなき神>を求める心も起きるのかなぁと、卵と鶏のようなことを考えていたわたしです。なんだか、ページの途中で、勝手な寄り道ばかりしてしまう読者なり。
by kokoro-usasan | 2015-01-18 00:30 | 日々 | Comments(0)


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