人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ことしは、どんどんいろいろなものを見たいです。

きのうは、恵比寿に「私の新美南吉展」、上野に「飛騨の円空展」を見に行きました。恵比寿のかたが、「わかりにくい場所にあるので迷わないで来られましたか」と声をかけてくださったけれど、不思議なことに、普段、かなり方向音痴のわたしが、地図も見ないであっさりたどり着けてしまったのでした。きっと、「わかりにくい場所」に迷い込みやすいわたしにとって、もともと、わかりにくい場所にある画廊は、とてもわかりやすかったというパラドックスでしょうか。ふふ。

わたしのなかで、新美南吉の書くお話の世界は、とても切ないものとしてあるのですが、展覧会に並んでいた作品は、わりとそうした切なさにとらわれない暖かなタッチのものが多く、これは「優しさ」の受け取り方ということなのかなぁと思いました。山福さんの作品は、「ツイテイッタテフテフ」でしたが、このお話は、わたしも、かつて読んだことがありました。あぁ、あの作品を選ばれたのかと思い、ぐっと胸がつまりました。童話には、ときどき、はっとするほど、心の慟哭や限りない思慕を内在させたものがあって、この「ツイテイッタテフテフ」もそのひとつだと思います。いつまでも見ていたくなる山福さんの作品でしたが、あとがつまっていたので、ぎりぎりできりあげての帰り道、わたしだったら、この物語を、どんなふうに描くだろうかと、ふと、自分の内なるものに問い掛けてみたくなりました。

円空展は夕方遅く滑り込みで入ったのですが、会期終了が間近なこともあってか、大勢のかたが来られていました。閉館まであと40分というところで入ったので、駆け足になってしまうかなと思いきや、結構、じっくり集中してみることができて、よかったです。古い仏像というのは、もともとが素晴らしい造形のものだったとしても、年月によって磨耗したり、剥げ落ちたりする、その変化の中に、得もいわれない味わいが出てくるもので、そう考えると、時間が付与してくれるもののマジカルな効果に感じ入ります。どんな天才も、このように時間が付与するものを、技術だけで先取りすることはできない。円空さんの仏像は、富裕な貴族ではなく、庶民のために量産されたものが多いので、木も節約し、かなり大雑把に掘り飛ばしたようなものもあるのですが、そこについた持ち主たちの手垢が、その像を、生き生きと命脈あるものに変えているように見えます。いずれにしても、みな、とっても可愛らしい仏様たち。あんなに笑ってる仏像、ほかにあるかしら。(^^)
会期はちなみに4月7日までです。
by kokoro-usasan | 2013-04-06 00:05 | 日々 | Comments(0)


閉じられていないもの


by kokoro-usasan

S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

最新の記事

雨続き⑵
at 2024-03-26 20:19
雨続き
at 2024-03-26 10:33
沈丁花 曇天
at 2024-03-24 11:59
ふき
at 2024-03-12 11:44
与一
at 2024-03-11 12:12
竹取物語
at 2024-03-04 13:15
意地悪はしないにかぎる
at 2024-03-01 11:29
言い訳が多いのは、無いも同じと。
at 2024-02-26 12:40
遠くまで見晴らせるキッチン
at 2024-02-24 18:40
フジヤ君の弟
at 2024-02-23 21:39

以前の記事

2024年 03月
2024年 02月
2024年 01月
more...

カテゴリ

全体
日々
つぶやき
ことば
音楽
映画

演劇

トピックス
スナップ
すてき
あやしい特派員
さまよえる消費者
すきなもの
あじわい~
気になるこの子
展覧会
庭の楽しみ
手をうごかしてみる
追想
ごあいさつ
きょうの新聞から
幕間
一枚の写真
ダンス


未分類

記事ランキング

外部リンク

検索