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揺れて。

揺れて。_e0182926_629383.jpg仕事のあと一旦帰宅し、病院の食事がまったく進まない母におむすびを作って持っていった。なんの変哲もないおむすびなのだが、思いがけず、ぱくぱく食べてくれた。病院に向う途中で、異変に気づいた、自転車を引きながら歩いていた道すがら、ちょうど通りがかった家の窓という窓が、ガタガタと異様に鳴っていたのだ。風が吹いているわけでもないのに、この家はなぜガタガタと鳴っているのだろう、怪訝に思い、振り返って立ちどまった。その音に聞き覚えがあったのだ。去年も、こんなふうに窓がカタカタとなり、へんだなぁと思ったあとでふいに大きな揺れがやってきたのだった。やはり地震だった。間もなくアルファルトの地面がぐらぐらと揺れ始め、木々がざわざわと震え始めた。走っている選挙宣伝カーは、なにも気づかないのか、よろしくよろしくと調子のいい声を出しながら行き来している。「危機管理能力」というのが政治家に大事だと思うなら、こういうとき、皆さん、ダイジョウブですかと、そのマイクを使って語り掛けられないものなのか。予め決められたマニュアルどおりの言葉を連呼しつづけているそれらの車を見ながら、なにか嘘寒い思いになる。緊急避難所に指定されている職場に携帯から電話をかけるがつながらず、とりあえずそれほどの震度ではなかったようだったので、そのまま母の病院に自転車を走らせた。病院では、先ほどの地震による問題はありませんでしたのでご安心くださいというアナウンスが流れていて、ロビーのテレビでは津波の速報が表示されていた。確かに病院は、いつもどおりの静けさで、母の病棟の患者さんたちもおっとりとしていて、安心した。母などは、前述のように、美味しいね、と言いながら二個もおむすびを食べてくれたわけで・・・。

それでも、こんな凍てつく季節に、悪夢を彷彿とさせるこんな揺れに見舞われなければならない東北の人たちを思うと本当に胸が痛む。惨事で大事なかたを失った人たちにしてみれば、そのことは、「震災」などという言葉でひとからげにされたくないほど辛い経験に違いない。「復興」という言葉では、なにも報われないものがそこにあるのだ。

ところで今朝の新聞に、ドキュメンタリー映画「主権在民」が12月8日、吉祥寺で上映されることが載っていた。観てみたいなぁと思った。覚えておかなければならないことでも、ひとは、それが辛いことだと、ときにふっと忘れたくなるもので、そのうち、忘れる自分を正当化することすらしかねない。それとどう向き合うかは、そのひとの意志の力なのだ。
by kokoro-usasan | 2012-12-08 01:12 | トピックス | Comments(0)


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