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時間の地層を掘ることができた人

時間の地層を掘ることができた人_e0182926_2245385.jpg大風の雨に窓が鳴る。でも、冬の寒さはもうここにはなく、どこか亜熱帯の匂いを孕んで。こんな晩はきっと、人肌を重ねて眠りたくなる恋人たちが多いかも。なんだか、なまめかしい春の夜の嵐だもの。わたしは、庭のチューリップがどうしているか心配。

杉浦日向子さんの漫画が読みたくなったけれど、彼女の十八番だった「江戸もの」まで遡りたくはなくて、「yasuji東京」という明治の東京が舞台のお話にした。井上安治という実在の画家の一生を追って、現代の東京に生きる若い女性(作者の分身でしょう)が、その時空を行ったり来たりしながら、変化の激しい東京という街に「時間の地層」のようなものを見出そうとする。

「現代の東京に生きる若い女性」と書いたけれど、日向子さんがこの漫画を描いたのは、1980年代のこと。
もう30年近く前の話だ。

    明治維新 関東大震災 敗戦 東京オリンピック 次は何で変わるんだろう
    仕方ないよ、町は変わるものだもの。生きてるからね。

主人公がボーイフレンドと会話する。

    東京は今、どのくらい? おじいさんかな。
    さぁ、中年かな。窓際族。

東京という街は、変わるとき、根こそぎ変わってしまうから、前どんなだったか、すぐ思い出せなくなってしまう。そうすることで、後を振り返らずに変化を遂げていけるのだけれど、日向子さんのように、この土地に、「江戸」や「明治」を想像する力を持つことができるとしたら、それは、すごく意味深いことに思える。

    次は何で変わるんだろう。

主人公のこんなつぶやきが、妙に身につまされた。「情報」ばかり詰め込まれて、人間の生き死にをきちんと覚えていられずにほとんど痴呆のようになってしまっている自分が怖くなるのだ。カラッポになっちゃうぞ、と。
わたしは、今、歴史のどこにいるのだろう。
by kokoro-usasan | 2011-04-23 22:52 | | Comments(0)


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