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весна света

どんよりと重く垂れこめた雲。また雪になるのだろうか。

もうこの2年(3年?)、どこにも旅に出かけることができずにいる。今の仕事は、両親の介護に都合のよいよう、かなり緩いシフトの職場に敢えて転職しているので、旅に出かけようと思ったら、割と時間の調整もつくのだ。けれど、いかんせん、独りでは暮らせない母を抱え込んでしまった。緩いシフトは、わたしの自由のためにあるのではないわけで、そこが、うまくいかないところ。

旅に出たいなぁ。昨夜、気まぐれにカッチーニのアヴェ・マリアをyou tubeで聴いていたら、その映像が函館のトラピスチヌ修道院の桜の様子で、とてもきれいだった。満開の桜、その花吹雪は、まるで、雪のようにも見えた。お花見にはまだ早いけれど、あぁ、やっぱり、旅に出たい、そんな思いが募った。

「光の春」というのは、俳句方面からきている言葉かと思ったら、ロシアで、とてもポピュラーな言い回しなのだそうだ。気温よりも、まず光の中に、春の兆しを感じるとるその繊細さは、長い冬に閉ざされた北国の人々にこそ、はっきりと感じ取れるものなのかもしれない。

それを知ったのも、今朝、なんとなく、「光」はヒンズー語でなんというのだろうと思ったついでに、ロシア語ではなんというのだろう、と、段々、興味が移っていったせいだ。ロシア語ではcbet(スヴェート)というそうだ。響きだけ聞くと、日本人が言う、ソビエトに似ているじゃないか、なんて思ったけれど、それ以上は調べていない。光という名前の国があったら、それはそれでロマンチックだけれど。

で、光の春というのは、весна света となる。

ドストエフスキーの「貧しき人々」だったかなぁ、記憶が定かではないのだけれど、短編で、困窮の末に、暗い部屋で今まさに息絶えようとしている主人公が、最後に「窓を開けてくれ」と頼む。せめて最期に太陽の光を見たいと。しかし、そうやって開かれたカーテンの外は、どんよりと暗い暗い空だったのだ。まったく、なんてことだと、胸がつまる小説だった。

だから、今朝は久し振りにモーツアルトを聴いている。小鳥の囀りのようなモーツアルトの音楽には、光があふれていると思う。人は、人に、こんなふうに、贈り物を残してくれる。

明るい世界のかたわらに闇があることを教えてくれるのが人間であるなら、曇り空の日にも明るい夢を見れることを教えてくれるのもまた人間なのだろう。
by kokoro-usasan | 2011-02-17 09:43 | ことば | Comments(0)


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