谷中にゆく。
いい夜でした。こんなにいい加減な男でもなんとか
生きていられるんだから、と常吉さんは言ったけれど、
いい加減というのは、こんなにきりきりと厳しい相克を
生き切ってゆこうとすることなのだなと、わたしは思った
のです。
(谷中 古書ほうろうで。鈴木常吉さんのライブを聴く)
昨夜、古書ほうろうの会場にいらした皆さんがかもし出す雰囲気は、
わたしには、なにか、とても懐かしいものでした。それは、それゆえの
傷口や、向こう見ずといった痛々しさも含めて、「現役」という感覚
だったのかもしれません。「現役」とは、年齢や職業のことではなく、
烈しい表現になりますが、例えば、狂うことを恐れない雰囲気というの
でしょうか。
いえ、会場にいらした皆さんが、というよりも、わたしはまず自分自身に
それを問い掛けていたのだと思います。自分は、狂わないように、と
そればかり心配して、かなり慎重に、この十数年を暮らしてきたのだなと。
「こんないい加減な男でもなんとか生きていられるんだから」
というのは、だから皆も大丈夫だよなどという慰めなどではけっして
なく、「だから、あんたもちゃんと狂ってみろよ」という挑発のように
私には思えたのでした。
親切な女性が、わたしの持っていたCDのジャケットに常吉さんのサインを
頼んでくれました。既に一枚持っているのですが、もう一枚会場で買ったの
です。ジャケットにサインをいれてくれている常吉さんの横で、ちょっと
テレながら、「もう、すでに一枚持ってるんですけど」と言訳したら、
「じゃ、そっちは買取ります」とお茶らける常吉さん。
昨夜よりも、今朝、目を覚ましたとき、なにかとても安らいでいたのは
なぜなのでしょう。古書店のかたすみにしつらえられたライブ会場の
灯りが今も心にともっています。
by kokoro-usasan
| 2010-11-17 12:57
| 音楽
|
Comments(0)
閉じられていないもの
by kokoro-usasan
最新の記事
雨続き⑵ |
at 2024-03-26 20:19 |
雨続き |
at 2024-03-26 10:33 |
沈丁花 曇天 |
at 2024-03-24 11:59 |
ふき |
at 2024-03-12 11:44 |
与一 |
at 2024-03-11 12:12 |
竹取物語 |
at 2024-03-04 13:15 |
意地悪はしないにかぎる |
at 2024-03-01 11:29 |
言い訳が多いのは、無いも同じと。 |
at 2024-02-26 12:40 |
遠くまで見晴らせるキッチン |
at 2024-02-24 18:40 |
フジヤ君の弟 |
at 2024-02-23 21:39 |
以前の記事
2024年 03月2024年 02月
2024年 01月
more...
カテゴリ
全体日々
つぶやき
ことば
音楽
映画
本
演劇
旅
トピックス
スナップ
すてき
あやしい特派員
さまよえる消費者
すきなもの
あじわい~
気になるこの子
展覧会
庭の楽しみ
手をうごかしてみる
追想
ごあいさつ
きょうの新聞から
幕間
一枚の写真
ダンス
※
夢
未分類