追憶のような
雨になる。暑さもやっと一休み。庭の緑も長い渇きを癒しているのだろう、ひっそりと
しめやかにそれぞれの朝に安らいでいる。窓から流れてくる空気が優しい。
けれど、日々は、そこそこに倦んでいる。わたしに快楽と呼べるものはなく、歓喜と
呼べるものなど、一体何年知らずにいることだろう。そこはかとない笑みを浮かべては
やり過ごしたこれらすべての日々に、ただそれだけに、諦めのような感謝と幸せを紡いで
きた。そうとしかできず、それでしか許されなかったものたちもまた、やがては、指の隙間
から取りこぼし、手放さざるを得ない。結局、美しかったものは、胸のうちに抱えたまま
誰にも口をつぐみ続けたひとりだけの夢と憧れだけだったのだろうか。
忘れてゆく。なにもかも。その夢や憧れさえも。
ブレンダ・ラッセルのその曲をふと思い出した。もう22年も経っているではないかと、
溜息も出るけれど、必死に取り繕ってきたものがあまりに無意味ではなかったかと
静かに見返さずにはいられないような淋しい懐かしさで、耳を傾ける。
本当のところはどうなのか。わたしは、繁華街の夜明け、薄汚くカラスに喰い散らか
された舗道の片隅で、煮ても焼いても喰えない人生を終えることに、密かに憧れては
いなかったか。摩天楼と、袋小路のある都会が、心から好きだったのではないのか。
だれもが、無縁仏のような、その街が。
しめやかにそれぞれの朝に安らいでいる。窓から流れてくる空気が優しい。
けれど、日々は、そこそこに倦んでいる。わたしに快楽と呼べるものはなく、歓喜と
呼べるものなど、一体何年知らずにいることだろう。そこはかとない笑みを浮かべては
やり過ごしたこれらすべての日々に、ただそれだけに、諦めのような感謝と幸せを紡いで
きた。そうとしかできず、それでしか許されなかったものたちもまた、やがては、指の隙間
から取りこぼし、手放さざるを得ない。結局、美しかったものは、胸のうちに抱えたまま
誰にも口をつぐみ続けたひとりだけの夢と憧れだけだったのだろうか。
忘れてゆく。なにもかも。その夢や憧れさえも。
ブレンダ・ラッセルのその曲をふと思い出した。もう22年も経っているではないかと、
溜息も出るけれど、必死に取り繕ってきたものがあまりに無意味ではなかったかと
静かに見返さずにはいられないような淋しい懐かしさで、耳を傾ける。
本当のところはどうなのか。わたしは、繁華街の夜明け、薄汚くカラスに喰い散らか
された舗道の片隅で、煮ても焼いても喰えない人生を終えることに、密かに憧れては
いなかったか。摩天楼と、袋小路のある都会が、心から好きだったのではないのか。
だれもが、無縁仏のような、その街が。
by kokoro-usasan
| 2010-07-29 12:03
| 音楽
|
Comments(0)
閉じられていないもの
by kokoro-usasan
最新の記事
雨続き⑵ |
at 2024-03-26 20:19 |
雨続き |
at 2024-03-26 10:33 |
沈丁花 曇天 |
at 2024-03-24 11:59 |
ふき |
at 2024-03-12 11:44 |
与一 |
at 2024-03-11 12:12 |
竹取物語 |
at 2024-03-04 13:15 |
意地悪はしないにかぎる |
at 2024-03-01 11:29 |
言い訳が多いのは、無いも同じと。 |
at 2024-02-26 12:40 |
遠くまで見晴らせるキッチン |
at 2024-02-24 18:40 |
フジヤ君の弟 |
at 2024-02-23 21:39 |
以前の記事
2024年 03月2024年 02月
2024年 01月
more...
カテゴリ
全体日々
つぶやき
ことば
音楽
映画
本
演劇
旅
トピックス
スナップ
すてき
あやしい特派員
さまよえる消費者
すきなもの
あじわい~
気になるこの子
展覧会
庭の楽しみ
手をうごかしてみる
追想
ごあいさつ
きょうの新聞から
幕間
一枚の写真
ダンス
※
夢
未分類