人間を。2
続「無意識に人間を撮るシリーズ」
随分昔のことになるが、職場の近くにある書店の前で友人と待ち合わせしていた。仕事が終わって急いで駆けつけると、友人は書店の向かい側の地面にぐったりと足を投げ出して座り込んでいた。この写真の男性は、人通りの多いこの場所で悠然とタバコを燻らせていたけれど、友人は魂が抜けかけているような沈痛な面持ちで、もし顔見知りでなかったら、怖いと感じるくらい荒んだものを体からにじませながら、通り過ぎる人たちを睨んでいた。いや、彼があのとき睨んでいたのは、もっと違うものだったかもしれないけれど。なぜ、そこまで傷ついているのか、冷たいかもしれないが、わたしは彼に問わなかったし、彼もなにも触れなかった。ただ、よっこらしょと立ち上がるのを手伝って、一緒に歩き始めただけだ。
写真の男性は、むしろ、どこか充足しているようにも見えた。いずれにせよ、「こんなふうにわたしもできるだろうか」 なにかとても強いその問いかけが自分を底から押し上げるようにしてシャッターを切らせた。
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by kokoro-usasan
| 2017-12-07 09:22
| 追想
閉じられていないもの
by kokoro-usasan
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