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追試だらけで。

母がまだ認知症ではなかった頃、シルバー人材派遣でお願いした庭師さんが、我が家の石楠花の木を見て、もうこれは寿命だな、と言ったらしく、たしかに、枯れ木のように見えていたのだけれど、母の認知症がひどくなり、好きだった庭仕事もしなくなり、庭の手入れを職人さんに頼まなくなってから、庭はあたかもジャングル状態、石楠花も、もはやこれまでという感じのなか、今年も、なぜか、ちゃんと、花を咲かせて、がんばっているのだ。ずぼらなわたしは、ほとんど、庭の手入れなどしていない。たしかに、手は抜いているが、声かけはしている。石楠花さん、あなたは寿命だと言われているそうなんですが、わたしは、まだまだ大丈夫だと思うんですよ、とか。

去年は、右側の枝先に偏って花が咲いたので、左側の枝をさすりながら、こっちのほうも、咲いてみましょうよ、こっちの枝もまだまだイケますよ、なんて囁いてみた。まぁ、真顔で言うわけではないけれど、今年は、左側にも蕾がつき始めているのだ。

母はまだ入院中。わたしが休職しないことには、在宅介護は無理ではないかという話になっている。こういうときの家族の思いというのは、なかなか複雑なものなのだろう。と、まるで他人事のように書いているけれど、いや、わたし自身、現在、かなり複雑なもの思いのなかにいる。母のケアマネさんとの間にも、うまく伝えられない思いの行き違いがあって、微妙に心理的距離ができてしまった。

「なんでも相談してください」と、「なんでも叶えます」は違うのだ。相談しても、はかばかしい答えがまるで返ってこないと、相談してくださいと言ってくれたのに・・・、と失望したりするが、それは、答えを保証しているものではないのだから、逆恨みというものだろう。

ひとりで悶々として、だんだん、内に引きこもってゆく。そうこうしている間に、母はわたしの名前を忘れ始めた。病院にゆくと、「おかあさん」と呼ばれるようになった。「おかあさん、一緒にうちに帰るでしょ」と聞く。「うん、もうすぐね」この繰り返し。子供に戻った母は、「おかあさん」が、いつも口から出まかせばかりいうことを感じ始めたのか、機嫌が悪い。笑ってほしいなぁと思う。思うけれど、胸を打つような笑顔で見つめられたら、それはそれで、ものすごく苦しいことになるのかもしれない。

このあたりで一度、態勢を立て直そうと、自分を奮い立たす。次から次へと目の前に立ち現れる人生の問いは、おそらく、すべて、自分にとって必要なもの。わたしが解きそびれているものが、何度も、追試で出てくるような。無回答で0点もらうよりは、珍回答で、出題者を困らせるくらいのことはしてみたい。





by kokoro-usasan | 2017-04-28 13:31 | 日々


閉じられていないもの


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