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癇癪玉

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  Wolfgang Stiller作品

前回、「つぶやきたい欲求」にかられて、休日をパソコンの前で延々過ごしていた。本当は、ほんのひとことのセンテンスを脈絡なくアップしてゆくことに興味を抱いていた。なんでも、起承転結が気になってしまう自分の、きつきつの固結びのようなものを、ほどきっぱなしにしてみたい。そう願っていたのに、いやはや慣性の法則というか、宿痾というか、「小粋」なつぶやきには程遠いものとなり、ぶんぶん固結びを振り回して、居直りというか、ふんぞりかえって終わった。

このところ「漱石」という2文字に胸のうちのなにかが反応するのは、漱石の文学に反応しているのではなく、漱石の「神経質」に反応しているようなのだ。「夢十夜」を書き上げるにいたる、彼の持ち前のナーバスさ。なにかにひたすら我慢している。癇癪持ち。

例のドラマを見ていたら、ありったけの衣装を着せて身動きとれなくさせている自分自身の「癇癪玉」のようなものが、小刻みに震えだすのを感じた。いい大人なのだから、折り合いをつけて、良き隣人でいようではないかとなだめる。本当はそれは、癇癪玉というよりは、命の玉なのかもしれないのだが、割れたあとに出てくるものを、本人が恐れている。だから、厚着をさせて押入れにしまっている。

だが、漱石が、創作という発露を得たのは、確かに癇癪玉の導きだったような気がしなくもない。

ところで、きょう、冒頭の写真に出会い、このぎょっとする作品に目を奪われた。世界には、燃えている炎を描写したいひともあれば、この炭化した残骸に無言のメッセージを込めたいひともいるのだと思った。

人によっては目をそむけたくなるかもしれないけれど、わたしはこの作品がなんだか好きだ。節くれだった指の、大きくて乾いた感触の手のひらのように、わたしの心をなだめてくれる。わたしの胸の内の癇癪玉も、これ面白いね、と言う。そうだね、と、わたしも癇癪玉に告げる。


今年、東京は雨の多い秋になった。きょうは快晴で嬉しい。洗濯物をたくさん干した。






by kokoro-usasan | 2016-10-12 10:34 | 幕間


閉じられていないもの


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