ひかり
未明には雨の音がしていたのに、夜明けとともに、その雨もあがってしまい、濡れた歩道には光が反射してとてもきれいだった。
朝刊を開くと、「現代女流書100人展」が特集されていた。もう十年以上前のことだが、やはり新聞で、八木重吉の詩「光」を墨書した作品を見つけ、ひどく心惹かれた。3センチ四方程度の小さなその写真を切り抜いて、ずっと持っていた。折に触れ眺め、お守りのように愛した。だが、それを書かれたかたのお名前は忘れてしまい、数年前、その紙片もどこかに紛失してしまった。ただ、心の中にだけ、その墨跡は鮮やかに残っていた。今朝、それと、とても似た墨跡で、同じ「光」を今回の展覧会に出された方がいるのを知った。もしかしたら、同じ方かもしれないと思ったが、掲載されているその作品の写真は、以前のものよりも、無碍な感じがある。私の感覚があっていれば、作者は同じで、作品も同じモチーフだが書いた時期が異なるということになる。(もしかしたら、同じ作品なのに、わたしの感覚が変わったのだろうか)それでも、相変わらず、わたしは、その書に心惹かれて仕方ない。理由はわかっている。
そのたおやかな墨跡に得も言われぬ母性を感じたのだと思う。まるで、一度も会ったことのないわたしの実の母が、わたしに遺してくれた言葉のように感じた。一度でいいから、おまえと遊びたかったと、言ってくれているように感じた。雨上がりの舗道と、その詩、その作品は、今日、また私の心に染みる。庭ではメジロが可愛い声で囀っている。
光
八木重吉
ひかりとあそびたい
わらったり
哭いたり
つきとばしあつたりしてあそびたい
朝刊を開くと、「現代女流書100人展」が特集されていた。もう十年以上前のことだが、やはり新聞で、八木重吉の詩「光」を墨書した作品を見つけ、ひどく心惹かれた。3センチ四方程度の小さなその写真を切り抜いて、ずっと持っていた。折に触れ眺め、お守りのように愛した。だが、それを書かれたかたのお名前は忘れてしまい、数年前、その紙片もどこかに紛失してしまった。ただ、心の中にだけ、その墨跡は鮮やかに残っていた。今朝、それと、とても似た墨跡で、同じ「光」を今回の展覧会に出された方がいるのを知った。もしかしたら、同じ方かもしれないと思ったが、掲載されているその作品の写真は、以前のものよりも、無碍な感じがある。私の感覚があっていれば、作者は同じで、作品も同じモチーフだが書いた時期が異なるということになる。(もしかしたら、同じ作品なのに、わたしの感覚が変わったのだろうか)それでも、相変わらず、わたしは、その書に心惹かれて仕方ない。理由はわかっている。
そのたおやかな墨跡に得も言われぬ母性を感じたのだと思う。まるで、一度も会ったことのないわたしの実の母が、わたしに遺してくれた言葉のように感じた。一度でいいから、おまえと遊びたかったと、言ってくれているように感じた。雨上がりの舗道と、その詩、その作品は、今日、また私の心に染みる。庭ではメジロが可愛い声で囀っている。
光
八木重吉
ひかりとあそびたい
わらったり
哭いたり
つきとばしあつたりしてあそびたい
by kokoro-usasan
| 2015-01-27 11:48
| 日々
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by kokoro-usasan
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