こちらあみ子
a)
おそらく原因はあるのだが、そうと思いたくない気持ちもあり、原因不明の頭痛が続いている。こんなに長引くのはひさしぶりのことだ。そのせいか、「思考回路」が閉じており、まともにものが考えられない。ところが、そうなってみてはじめて、小説を読む心の余裕ができた。今朝も、ズキズキする頭を横にしたり、縦にしたりしながら、ひとつ小説を読み終えた。「こちらあみ子」(今村夏子著)
友人の息子さんが、母親に薦めたものらしく、それを読んだ友人が、葉書の片隅に、よかった、と書添えてくれた。わたしは、そのお返しに、小池昌代さんの「たまもの」を薦めてみようかと思ったのだが、体調のせいか、未だに返信を書けずにいる。
b)
「こちらあみ子」はもとは、「あたらしい娘」という題名だったそうだ。太宰治賞、三島由紀夫賞と相次いで受賞したあと、「しかし、タイトルに難あり」と指摘されることが重なったため、単行本になるとき改題されたらしい。友人が、「こちらあみ子」と書いてくれたのを読んだとき、一瞬漫画かと思った。友人のびっしりと小さな字のせいで、「あみ子」ではなく、「こちらあみる」に読めてしまったこともある。なにか、軽い響きのこのタイトルに、幾分、不信感を持ちながら、手にとったが、読み終えてみると、なるほど、と思える。「こちらあみ子」の「あみ子」の部分は、やがて、読者によって、一度は、自分の名前で置き換えられることになるのかもしれない、と。
友人は、葉書に、「ちょっと孤独で心に残りました」と書いていた。孤独かぁ、と思いながら読み始めたのだが、今、これを打ちながら、友人の文面を確かめたら、また読み違えていたことに気づいた。友人は、「ちょっと強烈で心に残りました」と書いてくれていたのだ。友人の字のせいなのか、わたしの頭痛のせいなのか、どうも、いけない。「強烈」だったのかぁ・・・。
c)
いまの時代、小説のあらすじも、解説も、感想も、ネットですぐに検索できるのだろう。わたしは支離滅裂に書くしか能のない人間なので、いろんなことをすっとばしてしまうけれど、それはご容赦。わたしが、いちばん、好きな場面は、物語の最後で、坊主頭の男の子が、あみ子に「そりゃ、おれだけのひみつじゃ」と言うところだった。こういう人間が、世の中に時々いてくれるおかげで、わたしのような生き損ない、狂い損ないの人間も、「ふうん」と言って生きてこれたのかもしれないと思った。分析したり、現実をつきつけあったりしても、だれも救えないことがあることを知ることができるかどうかには、経験の時間差もあれば、心の個人差もある。坊主頭の子が、いみじくも告げたその言葉は、わたしの心の深いところに沁みた。
おそらく原因はあるのだが、そうと思いたくない気持ちもあり、原因不明の頭痛が続いている。こんなに長引くのはひさしぶりのことだ。そのせいか、「思考回路」が閉じており、まともにものが考えられない。ところが、そうなってみてはじめて、小説を読む心の余裕ができた。今朝も、ズキズキする頭を横にしたり、縦にしたりしながら、ひとつ小説を読み終えた。「こちらあみ子」(今村夏子著)
友人の息子さんが、母親に薦めたものらしく、それを読んだ友人が、葉書の片隅に、よかった、と書添えてくれた。わたしは、そのお返しに、小池昌代さんの「たまもの」を薦めてみようかと思ったのだが、体調のせいか、未だに返信を書けずにいる。
b)
「こちらあみ子」はもとは、「あたらしい娘」という題名だったそうだ。太宰治賞、三島由紀夫賞と相次いで受賞したあと、「しかし、タイトルに難あり」と指摘されることが重なったため、単行本になるとき改題されたらしい。友人が、「こちらあみ子」と書いてくれたのを読んだとき、一瞬漫画かと思った。友人のびっしりと小さな字のせいで、「あみ子」ではなく、「こちらあみる」に読めてしまったこともある。なにか、軽い響きのこのタイトルに、幾分、不信感を持ちながら、手にとったが、読み終えてみると、なるほど、と思える。「こちらあみ子」の「あみ子」の部分は、やがて、読者によって、一度は、自分の名前で置き換えられることになるのかもしれない、と。
友人は、葉書に、「ちょっと孤独で心に残りました」と書いていた。孤独かぁ、と思いながら読み始めたのだが、今、これを打ちながら、友人の文面を確かめたら、また読み違えていたことに気づいた。友人は、「ちょっと強烈で心に残りました」と書いてくれていたのだ。友人の字のせいなのか、わたしの頭痛のせいなのか、どうも、いけない。「強烈」だったのかぁ・・・。
c)
いまの時代、小説のあらすじも、解説も、感想も、ネットですぐに検索できるのだろう。わたしは支離滅裂に書くしか能のない人間なので、いろんなことをすっとばしてしまうけれど、それはご容赦。わたしが、いちばん、好きな場面は、物語の最後で、坊主頭の男の子が、あみ子に「そりゃ、おれだけのひみつじゃ」と言うところだった。こういう人間が、世の中に時々いてくれるおかげで、わたしのような生き損ない、狂い損ないの人間も、「ふうん」と言って生きてこれたのかもしれないと思った。分析したり、現実をつきつけあったりしても、だれも救えないことがあることを知ることができるかどうかには、経験の時間差もあれば、心の個人差もある。坊主頭の子が、いみじくも告げたその言葉は、わたしの心の深いところに沁みた。
by kokoro-usasan
| 2014-09-03 12:30
| つぶやき
|
Comments(2)
Commented
by
よも
at 2014-09-03 21:33
x
Amazonで『こちらあみ子』を購入しようとしたらジュンパ ラヒリ『停電の夜に』と抱き合わせになってた。
謎である。
頭痛お大事に、いつも元気ですかとそちらに手を振っております。
謎である。
頭痛お大事に、いつも元気ですかとそちらに手を振っております。
0
Commented
by
kokoro-usasan at 2014-09-04 00:14
よもちゃん、ありがとう。
よもちゃんも、少しずつ、読書再開ですね。
「あみ子」は切ないお話なのですが、読み終わったあと
もしかしたら、よもちゃんの心の中に、すみれの花が、
ひとつ残るかもしれません。
わたしの中にも、今、咲いてまする。
よもちゃんも、少しずつ、読書再開ですね。
「あみ子」は切ないお話なのですが、読み終わったあと
もしかしたら、よもちゃんの心の中に、すみれの花が、
ひとつ残るかもしれません。
わたしの中にも、今、咲いてまする。
閉じられていないもの
by kokoro-usasan
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