Rain Won't
Rain won't stop me.
Wind won't stop me.
Sweltering summer heat will only raise my determination.
With a body built for endurance,
a heart free of greed,
I'll never lose my temper,
trying always to keep a quiet smile on my face.
a)
仕事の帰り、とても素敵な絵本に出会った。賢治の著名な詩をアーサー・ビナードさんが英訳し、それにアニメーターの山村浩二さんが絵をつけたものだ。ビナードさんの英訳も好いが、とにかく山村さんの絵が素晴らしい。色みを押さえた渋い画面に、観賞用ではない、ともに生きてゆく相棒としての凄みすら感じさせる自然が描かれている。
あとがきでビナードさんは言う。賢治の「雨ニモマケズ」の舞台は「日本」であると人々は当たりまえのように思っているが、果たして、賢治が見ていた当時の日本と、今の日本は同じだろうか。別の国といってもいいくらい、社会も自然も経済も変わってしまったのではないか。土壌の良し悪しをたえず気にかけ、地質も水質もわが身の一部としてとらえていた詩人が、放射能汚染を許容することなどなかっただろう。
さらに、ビナードさんは、「雨ニモマケズ」を、勝ち負けではなく、「won't stop me」と訳された。とても優れた訳だと思う。賢治は雨や風を敵対視していたわけではなく、自然の一部である人間としての自分が、同じ自然の壮大な仲間たちと、どのようにともに生きてゆけばいいのかを考えつづけ、そうした自分の意志や願いを、なにものも止めることはできない、自分のなかにある折れそうな弱い気持ちにすら屈することなく、静かに微笑みながら、この信念にそって生きてゆきたいのだという思いに貫かれていた。切ないかな、もはや、この詩を手帳に書き留めた時点で、彼の残り時間は、すでに僅かなものになっていたのではあったけれど。
雨にも負けず、風にも負けない、とは、すなわち、自分に負けないということに他ならないのかもしれない。そして、彼は、ひとり、その通りに、短い生涯を生ききったのだと思う。「なにものも、わたしの思いをとめることはできない」これほどの信念を持って、わたしは生きているだろうか。
「信念」というものは、三者三様だ。現在の日本の首相もまた、自分の信念に従って、「なにものもわたしの思いを・・・」と考えているに違いない。しかし、例えば、コントロールできてもいない福島原発の汚染水を、「完全にブロックできている」と世界に向けて大虚言を放つ、そのようなことが平気で為せる倫理観、そこに、肯うべき理はない。他者を死に至らしめることに対し鈍感な人間の「信念」は、剥き身の刃のように危険であること、たとえ本人が気づき得ない、悟りえないとしても、「それは違う」と立ち上がる側の人間の信念が弱く、雨にも風にもすぐ負けてしまうようであるならば、前者こそが、堂々と、その信念を貫くことになるだろう。
写真で何度も見たことのある「雨ニモマケズ」の直筆の手帳。、今、この絵本を眺めながら、折れずに生きたいと願う人間なら、おそらく必ずその心に抱え持たなければならなかっただろう苛酷な孤独、賢治の孤独が、ふと胸に迫ってくる。ペンを握る賢治の指、掌は、どんなふうに息づいていたのか。
b)
昨日の新聞で赤坂憲雄さんが、奄美の人のように思われがちな島尾敏雄が実は東北の人であったことを書いておられた。わたしもたまたま、埴谷雄高のことを調べていたときに、奄美の目取真俊さん経由で、島尾さん、埴谷さんともども、同じ小高というところの出身であることを知ったのだった。彼らの貴重な資料が保管保存されている記念館は、原発事故で立ち入りが禁止となり、その後、資料は放置され、現在どうなっているのか、心配されている。こうした未収束の事柄になんの方策も打ち出せないものたちが、最も、安易で無謀な方向性である「原発再稼動」を臆面もなく口に出せる、その神経が、わたしにはどうしてもわからない。
埴谷島尾記念文学資料館
昨年12月に撮影されたという小高地区の映像
c)
こんなにもきれいな星に生まれながら・・・。
Wind won't stop me.
Sweltering summer heat will only raise my determination.
With a body built for endurance,
a heart free of greed,
I'll never lose my temper,
trying always to keep a quiet smile on my face.
a)
仕事の帰り、とても素敵な絵本に出会った。賢治の著名な詩をアーサー・ビナードさんが英訳し、それにアニメーターの山村浩二さんが絵をつけたものだ。ビナードさんの英訳も好いが、とにかく山村さんの絵が素晴らしい。色みを押さえた渋い画面に、観賞用ではない、ともに生きてゆく相棒としての凄みすら感じさせる自然が描かれている。
あとがきでビナードさんは言う。賢治の「雨ニモマケズ」の舞台は「日本」であると人々は当たりまえのように思っているが、果たして、賢治が見ていた当時の日本と、今の日本は同じだろうか。別の国といってもいいくらい、社会も自然も経済も変わってしまったのではないか。土壌の良し悪しをたえず気にかけ、地質も水質もわが身の一部としてとらえていた詩人が、放射能汚染を許容することなどなかっただろう。
さらに、ビナードさんは、「雨ニモマケズ」を、勝ち負けではなく、「won't stop me」と訳された。とても優れた訳だと思う。賢治は雨や風を敵対視していたわけではなく、自然の一部である人間としての自分が、同じ自然の壮大な仲間たちと、どのようにともに生きてゆけばいいのかを考えつづけ、そうした自分の意志や願いを、なにものも止めることはできない、自分のなかにある折れそうな弱い気持ちにすら屈することなく、静かに微笑みながら、この信念にそって生きてゆきたいのだという思いに貫かれていた。切ないかな、もはや、この詩を手帳に書き留めた時点で、彼の残り時間は、すでに僅かなものになっていたのではあったけれど。
雨にも負けず、風にも負けない、とは、すなわち、自分に負けないということに他ならないのかもしれない。そして、彼は、ひとり、その通りに、短い生涯を生ききったのだと思う。「なにものも、わたしの思いをとめることはできない」これほどの信念を持って、わたしは生きているだろうか。
「信念」というものは、三者三様だ。現在の日本の首相もまた、自分の信念に従って、「なにものもわたしの思いを・・・」と考えているに違いない。しかし、例えば、コントロールできてもいない福島原発の汚染水を、「完全にブロックできている」と世界に向けて大虚言を放つ、そのようなことが平気で為せる倫理観、そこに、肯うべき理はない。他者を死に至らしめることに対し鈍感な人間の「信念」は、剥き身の刃のように危険であること、たとえ本人が気づき得ない、悟りえないとしても、「それは違う」と立ち上がる側の人間の信念が弱く、雨にも風にもすぐ負けてしまうようであるならば、前者こそが、堂々と、その信念を貫くことになるだろう。
写真で何度も見たことのある「雨ニモマケズ」の直筆の手帳。、今、この絵本を眺めながら、折れずに生きたいと願う人間なら、おそらく必ずその心に抱え持たなければならなかっただろう苛酷な孤独、賢治の孤独が、ふと胸に迫ってくる。ペンを握る賢治の指、掌は、どんなふうに息づいていたのか。
b)
昨日の新聞で赤坂憲雄さんが、奄美の人のように思われがちな島尾敏雄が実は東北の人であったことを書いておられた。わたしもたまたま、埴谷雄高のことを調べていたときに、奄美の目取真俊さん経由で、島尾さん、埴谷さんともども、同じ小高というところの出身であることを知ったのだった。彼らの貴重な資料が保管保存されている記念館は、原発事故で立ち入りが禁止となり、その後、資料は放置され、現在どうなっているのか、心配されている。こうした未収束の事柄になんの方策も打ち出せないものたちが、最も、安易で無謀な方向性である「原発再稼動」を臆面もなく口に出せる、その神経が、わたしにはどうしてもわからない。
埴谷島尾記念文学資料館
昨年12月に撮影されたという小高地区の映像
c)
こんなにもきれいな星に生まれながら・・・。
by kokoro-usasan
| 2014-03-30 10:32
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閉じられていないもの
by kokoro-usasan
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