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the color purple

the color purple_e0182926_2135100.jpgきょうは、スローモーなわたしにしては珍しく、午前中から、いくつかの用事をニアミスになりそうになりながらなんとか済ませたあと、午後は、ふいに気がゆるんで、「カラー・パープル」のVHSなど見始めてしまいました。

アリス・ウォーカーの原作にはとても感動しましたが、スピルバーグ監督のこの映画ヴァージョンも好きです。1900年代初頭のアメリカ南部、暴力と差別の中で虐げられるばかりだった黒人娘セリーが、同じ黒人でありながら気高く生きようとする歌手のシャグに出会い、地味ながら少しずつ変わってゆく様には、不思議な凄みがあります。セリーは、もどかしいほどに寡黙ですが、みじめな自分と違い、輝いているシャグの心の底にもしんしんと流れている静かな「哀しみ」のあることに気づく心を持っています。そこがとてもいいのです。そこが人間のあなどれなさであり、深さであり、もし、そういうものに気づけないままの強さというものがあるのなら、それこそが荒んでみじめなものなのではないかと思わせられます。3時間近い長丁場の映画ですが、何度も、うっと胸打たれ、画面に釘付けになってしまいました。


そういえば、アリス・ウォーカーはこの小説を5年計画で書くつもりだったのですって。その間、食べるものに困ったら、先生をしたり、庭でとれる林檎を売って食いつなごうと思っていたと・・・。ところが、書き始めて1年経たないうちに最後のページを書き上げてしまい、まるで愛する人を一度に全部喪ってしまったような気持ちだったと語っています。「繁栄を享受したひとではなく、繁栄の踏み台になったひとたちの声」「大事なことは知らなくていいとされてきたひとたちの声」を書きたかった彼女に、物語の登場人物たちのほうが詰め寄ってきて、いっきに語り尽くしてくれたのでしょう。それは、アリス・ウォーカーという女性自身にも、他者の「哀しみ」に深いところで気づき得る心があるということの証明であるのかもしれません。
by kokoro-usasan | 2012-12-17 23:01 | 映画 | Comments(0)


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