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気づくまでの時間

子供達の夏休み、もう終りですね。

わたし、覚えてるの。小学校でのプールの帰り道、友達の履いていたサンダルがうっかり脱げたのをいいことに、そのサンダルを持って、こっち、こっちと、ふざけていたら、その子、アスファルトの熱で足の裏を火傷してしまった。「そのぐらいのこと、どうして分からないんですか。お子さんによく言っておいてください」と、その子のお母さんから、うちの母に抗議の電話があったそうだ。母はそれをそのまま、わたしに伝えただけで、特に叱らなかった。ただ、「どうして分からないんですか」という先方のお母さんの言葉は、わたしの心に深く響いて、炎天下のアスファルトは高熱になっており、そのまま素足で歩けば、とても熱いのだということ、ほんとにどうして気づかなかったのだろうか、「気づかない」のはどうしてなんだろうと、恥かしく、そして後悔した。なんだか、それから、ずっと、「気づかない」ということについて、繰り返し考えているような気がする。

今日は、江古田で開かれている安世鴻(アン・セホン)さんの写真展「重重」を見に行ってきた。過日、ニコンが政治的な圧力(と思われる)で展示を一方的に中止する通告を出して問題になった写真展と同じものだ。場所をかえての東京における二回目の展示。岩波の「世界8月号」にも掲載され、そこで何枚かの写真を見ていたのだけれど、新聞の小さな記事で今回の展示を知り実際に足を運んでみたくなった。第二次大戦の際、日本軍によって、朝鮮から中国に慰安婦として連れてゆかれ、敗戦で、そのまま中国に置き去りにされてしまった女性たちの「今」を撮った写真たちだ。「今」と言っても、既に70歳を越える高齢だった彼女たちは撮影後もう何人も他界されているそうだ。そうやって、不用意に記憶の彼方にいってしまうものを、写真は留めおいてくれる。


気づかずに、そして知ろうともせずに通り過ぎていってしまうのかもしれない他者の重く深い痛み。
癒えることなく・・・。
by kokoro-usasan | 2012-08-30 22:02 | つぶやき | Comments(6)
Commented by http:// at 2012-08-31 00:10 x
「どうして分からないのっ?」私の母がしばしば口にしていた言葉。一番古い記憶は、私がテレビを見ているときに「今何時?」と聞かれて、壁の時計が止まっていたので「分からない」と答えたときに言われたものだ。テレビの左上に「17:20」というように時刻が表示されていたけれど、私にはそれが時計と同じように時刻を示すものだということが分からなかったのだ。たぶん誰も教えてくれなかったのだと思う。まだ幼稚園のころだから。壁の柱時計の読みかたは教わって知っていたけれど。
母は自分の思い通りにならないと癇癪を起こす人だったので、その時も叱られた記憶がある。
「あれ持ってきて」「あれって何?」「なぜ分からないのっ?」こういうことはしばしばあり、今になって思えば、そういう性格の人だったとしか言いようがない。というわけで、私は、この世の中には「分からないこと」が当たり前のように満ち溢れているもの、理不尽に怒られることが当たり前と思って育ってしまったのでした。自分で気が付くのに30年くらいかかったよ。ものすごい回り道だった。
Commented by kokoro-usasan at 2012-08-31 05:56
あらま。どなたのコメントか、名無しですけど、めざさんですよね。匿名希望だった?(言っちゃったよー。ふふ)それで、また、時間が経つと、そんな母上のことも、ふっと、なにか、別の視点から分かってくることがあるのかもしれませんね。もしかしたら、母上自身が、日々、「分からないこと」と葛藤されてたのかもしれない・・・。

いずれにしても、上手に気づいてゆけたらいいなぁって思うのです。
時間は、どんどん過ぎていってしまうから。
Commented by めざ at 2012-08-31 14:13 x
あらま。名前をかくすつもりはなかったけれども、頭隠して尻隠さず・・・みたいなことに。
かくしてもバレバレですねえ。
「時間はどんどん過ぎていく」しかもどんどん速くなっていく~!
ペコロスさんの本を買い、ワタクシが読み、夫が読み、夫母が読み、それぞれにそれぞれの感想があるのだろうけれど、さすがに83歳の夫母の前ではちょっと言いにくい。
「ダンナさん、ペコロス頭じゃなくてよかったね」と言ってあげたけど。
死んだじいちゃんはペコロスさんだったなあ。じいちゃんの親戚は見事にペコロス系と若白髪系に分かれていますね。現在どっちでもないおじさんが、今後どっちに転ぶのか、長い目で見守りたいと思います。

しかしなあ、理不尽なことに怒りを示してもよいと気づくの遅かったよ。
Commented by kokoro-usasan at 2012-08-31 20:17
あらあらま。笑。

ペコロスも読んでくれたの?めざさん。うれしいな。あの本は職場でも人気で、お昼休みに少し見せてあげた同僚が、すかさず買っていました。しかも、ご主人と長崎に旅行することにしたんですって。あの本、長崎の方言で書かれてて、いい感じでしたもんね。わたしは、なんといっても、わたしと同じ名前の「みつえ」さんが、ペコロスさんにとても大事にしてもらっているのを見てると、自分が大事にしてもらってるような不思議な気分になって、うれしいの。わたしも、いつかボケたら、あんなふうに見守ってくれるひとがいるといいなぁ。でも結構毒舌だから、ボケたら、悪名高きみんなの嫌われ者になってしまうかも。笑。




Commented by 北村浩子 at 2012-09-12 20:09 x
嬉しいです、復活。安堵しています。

『ペコロスの母に会いに行く』、私も買いました! いつもは一気に読みますが、ちびちび読んでいます。読むのにエネルギーが要ります。ページによって軽妙さと重さの配合が違いますが、それをときどき間違って受け止めてしまうようです。さくさくと行くことができません。同じ体験をしているわけでも、母のことを思い出す、というのでもないのに。不思議です。
Commented by kokoro-usasan at 2012-09-14 13:25
*浩子さん、わたしときたら、右往左往しててお恥ずかしいです。「ペコロス」、確かに、安易に読み飛ばそうとすると、ふっと、つき返される部分がありますよね。「軽妙さと重さの配合が違う」と鋭く分析されているのを読んで、やはり普段から、しっかり、本を読んでらっしゃるかたなんだなぁと改めて感心しました。実は、あれは、認知症の話なんかじゃないんじゃないかと思います。もっと、鬼気迫るなにかのような。逆にいうと、なんでも、認知症、認知症と、人をカテゴライズして、人ではなく、症状にむきあってしまうように鍛錬されてゆく介護者への小さな警鐘のようにも思えます。さらっと読むぶんには、おもしろおかしいのですけど・・・。

さくさくといけない、という北村さんの感覚、わたしには信頼できるものに思えます。


閉じられていないもの


by kokoro-usasan

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